072043 ランダム
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★☆自分の木の下☆★

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待ち人/プロローグ



旅人の日常シリーズ1/プロローグ 【血が苦手な方は避けてください】 





<< 待ち人 >>






 こびり付いた血は、すでに乾いてどす黒く変色している。周囲に広る、血の歪んだ匂いが流した量を語っている。


 ああ、もうすぐだ。 
 もうすぐ会える。


 最奥まで乾いた喉は息をする度痛みが伴う。
 痛くて、痛くて、喉をかきむしる。伸びた爪に血が溜まり、血管を模して胸元へと流れる。微かに出た声は口内の鉄の味を更に強くした。


 幾千流した涙はいくつ貴方に届いたのだろう。永久に彷徨う雫はやがて天へと登り、雨となり、他の生命の繋ぎとなり、力となる。


 強く風が吹き、髪がなびく。まどろんだ瞳で見つめた先には世界の果ての地平線。
 

 腰を下ろしていた身体が、ゆっくりと地へと落ちていった。
 霞んだ視界に、塗れながらも未だ光輝く短剣を見る。


 もうすぐ……。


 緩い動作で、だが確実に瞼が落とされる。
 ふいに、こびり付き離れなかった、錆びた匂いがしなくなった。
 

 変わりに匂う狂喜の香り。 


 それは目印。
 それは証拠。


 ほら、甘い甘い、花の香りが鼻をくすぐる。
 やっと見つけた愛する人。
 

 自然と緩む口角で笑みを作る。
 最後の力を振り絞り乾いた口を開けた。



『―――今行くよ』









血.gif



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